「SaaS 営業 年収」と調べると、500万円台から1,000万円超まで、バラバラの数字が出てきます。理由は単純で、その数字が、まったく別のものを測っているからです。
この記事では、数字の種類を分けたうえで、求人の提示額と上場企業の平均年収を並べます。そのうえで、年収の差を生む「評価の仕組み」と、求人で確認すべき3点を整理します。
年収の数字は、3種類ある
| 種類 | 何の数字か | どう読むか |
|---|---|---|
| ① 求人の提示額 | 企業が「このくらいで採用したい」と出した想定年収 | 入社時の目安。上限は成果を出した場合の数字で、実績ではない |
| ② 有価証券報告書の平均年収 | 上場企業の全社員の平均(賞与込み) | 管理職・年長者・営業以外を含む。新規入社の額とは別物 |
| ③ 転職サービスや統計の実績 | 登録者や納税者の現在の年収 | 定義が各社で違う。業種平均で、営業職だけの数字ではないこともある |
この3つを混ぜて比べると、「SaaS営業は低い」「いや高い」という話になります。どの数字を見ているのかを、先に決めてください。
① 求人の提示額|500万円台前半〜700万円台後半に集まる
SaaS企業の営業求人42件の想定年収を、2026年10月5日時点で集計しました。
| 職種区分 | 件数 | 下限(中央値) | 上限(中央値) | 中点(中央値) |
|---|---|---|---|---|
| インサイドセールス | 23 | 500万円 | 720万円 | 600万円 |
| フィールドセールス | 13 | 550万円 | 800万円 | 700万円 |
| 一気通貫(インサイド〜フィールド) | 6 | 535万円 | 800万円 | 662万円 |
| 全体 | 42 | 500万円 | 799万円 | 650万円 |
読み取れるのは2点です。
- 下限は、職種区分を問わず500万円前後に集まる。 入社時の提示額に、大きな差はありません。
- 差が出るのは上限。 フィールドセールスのほうが、上限が高い傾向があります。
注意点があります。
- 数字は提示額であって、実績ではありません。
- 上限は、成果を出した場合の数字です。確認できた求人には、固定残業代(月40時間分など)を含むものもありました。
- 一気通貫は6件と少なく、参考程度に見てください。件数が少ない区分は、数字がぶれます。
- 職種区分は、職種名と求人本文から取得者が判断しています。
② 上場SaaS企業の平均年収|544万〜923万円
上場しているSaaS企業は、有価証券報告書で平均年収を開示しています。
下の10社の数字は、すべて各社の最新の有価証券報告書(EDINET)の「従業員の状況」で確認したものです(2026年10月5日時点)。
| 企業名 | 平均年収 | 平均勤続年数 | 平均年齢 | 対象期 | 確認 |
|---|---|---|---|---|---|
| freee | 805.6万円(※) | 2.2年 | 33.2歳 | 第14期(2025/7〜2026/6) | 原本で確認 |
| マネーフォワード | 723.4万円 | 2.9年 | 34.3歳 | 第14期(2024/12〜2025/11) | 原本で確認 |
| PKSHA Technology(AIソリューション主体) | 922.8万円 | 1.5年 | 36.1歳 | 第13期(2024/10〜2025/9) | 原本で確認 |
| HENNGE | 847.8万円 | 4.5年 | 35.3歳 | 第29期(2024/10〜2025/9) | 原本で確認 |
| サイバーセキュリティクラウド | 812.5万円 | 2.5年 | 37.6歳 | 第16期(2025/1〜2025/12) | 原本で確認 |
| Sansan | 約810万円 | 3.4年 | 32.1歳 | 第19期(2025/6〜2026/5) | 原本で確認(百万円単位表記のため、±5万円程度) |
| サイボウズ | 718.8万円(※※) | 6.7年 | 36.4歳 | 第29期(2025/1〜2025/12) | 原本で確認 |
| ヤプリ | 704.7万円 | 3.8年 | 35.5歳 | 第13期(2025/1〜2025/12) | 原本で確認 |
| ラクス | 664.7万円 | 3.2年 | 32.7歳 | 第26期(2025/4〜2026/3) | 原本で確認 |
| スマレジ | 543.7万円 | 3.3年 | 33.8歳 | 第21期(2025/5〜2026/4) | 原本で確認 |
平均年収は、提出会社単体の全社員(賞与および基準外賃金を含む)の平均です。営業職だけの数字ではありません。
- ※ freee は、第14期から算出方法が変わり、株式報酬費用を含めています。前期(688.4万円)とは基準が違うため、単純に比べて「上がった」とは読めません。
- ※※ サイボウズは、持株会奨励金を含む旨の注記があります。
- PKSHA Technology は、AIソリューション事業が主で、SaaS は一部です。
見るべきなのは、金額よりも平均勤続年数です。上場SaaS企業は、勤続が2〜3年台の会社が目立ちます。若手の比率が高く、平均年齢も30代前半〜半ばです。平均年収が高くても、その会社で長く働いた人の年収とは限りません。
③ 他の統計との違い
| 出典 | 数字 | 定義の違い |
|---|---|---|
| 国税庁「民間給与実態統計調査」(令和7年分) | 情報通信業の平均給与 681.9万円 | 職種を問わない、業種全体の平均 |
| doda 平均年収ランキング(2024年9月〜2025年8月) | 営業(IT・通信)461万円 | 登録者の現在の年収(実績)。SaaSに限らない |
求人の提示額(中点650万円)が、doda の実績(461万円)より高く見えるのは、定義が違うからです。提示額は「採用したい水準」、doda は「いま働いている人の年収」。直接比べてはいけません。
年収の差を生むのは、「評価の仕組み」
同じSaaS営業でも、年収の伸び方は会社によって大きく違います。その差が出る場所が、評価の仕組みです。
岩田の見方では、SaaS企業は本当にさまざまです。個人インセンティブを導入している会社もあれば、そうでない会社もあります。確認できた求人でも、「固定給のみ」と書くものと、「固定給+成果給(インセンティブ年2回)」と書くものが分かれていました。
評価の軸も違います。成果だけを見る会社と、行動量も見る会社があります。行動量を評価に入れる会社は多くなく、かなりキーエンスらしい設計だった、というのが岩田の見方です。キーエンスでは、最初は行動量と成果がおおむね半々で、グレードが上がるほど成果の比率が上がっていきます。
責任者になる人は、何が違うのか
岩田の経験では、最初に差がつくのは行動量を担保できる人です。立ち上がりが早いからです。
ただ、その先でエンタープライズ領域に進むと、様子が変わります。製品の機能を紹介するだけでは売れなくなる。お客様にとってどんな価値があるのか、費用対効果が合うのか。課題までブレイクダウンして入っていく、ソリューション営業の力が必ず必要になります。
具体的には、まず売ることです。自分の数字をしっかり作れること。そのうえで、育成を任されたときに、部下がちゃんと育つ状態を作れる人が、責任者になっていく、と岩田は見ています。
求人で確認すべき3つのこと
- 営業モデルは何か。 インサイドセールスとフィールドセールスが完全に分かれる「The Model」型か、そうでないか。SaaSの会社を選ぶときに、最初に見てほしい点です。年収だけでなく、日々の仕事の中身が変わります。
- 固定給と成果給の割合。 提示額の上限は、成果給を含むことがあります。固定給の額と、成果給の条件を確認してください。
- 固定残業代が含まれているか。 含まれる場合は、何時間分かを確認してください。同じ年収でも、時間あたりの額が変わります。
まとめ
- SaaS営業の年収は、求人の提示額・有報の平均・統計の実績の3種類があり、別物
- 求人の提示額は、500万円台前半〜700万円台後半に集まる(42件、2026年10月5日時点)。差が出るのは上限
- 上場SaaS企業の平均年収は、全社員の平均。営業職だけの数字ではなく、勤続が短い会社も多い
- 年収の差は、評価の仕組み(固定給と成果給、行動量を見るか)で決まる
- 求人では、営業モデル・固定給と成果給の割合・固定残業代の3つを確認する
補足:求人の数字は、2026年10月5日に確認した公開求人(AMBI、エンゲージ、doda、スタンバイ、求人ボックス)の提示額で、実績ではありません。有報の数字は、各社の最新の有価証券報告書に基づきます。
