「キーエンス 激務」と検索する人が本当に知りたいのは、残業が何時間か、ではないはずです。自分が入ったら、どんな物差しで評価され、何をやり続けることになるのか。 そこが分からないから、「きつい」という言葉だけが独り歩きします。
この記事は、キーエンスの営業が「激務」と言われる理由を、労働時間ではなく評価の仕組みから読み解きます。
「激務」は、3つに分けないと答えが出ない
同じ「きつい」でも、中身は別のものです。
| きつさの種類 | 何が負担になるか | この記事での扱い |
|---|---|---|
| ① 時間のきつさ | 労働時間、移動、繁忙期 | 公開情報は数字が揺れる。後半で一次情報を追記 |
| ② 数字のきつさ | 目標、達成のプレッシャー | 評価の設計とセットで説明 |
| ③ 行動のきつさ | やるべき行動の量を、毎日問われる | この記事の中心 |
多くの記事が①を残業時間で語り、②を「ノルマが厳しい」で済ませます。キーエンスらしさが出るのは、③です。
行動量を評価に入れる会社は、実は多くない
岩田の見方では、行動量を評価の対象にしている会社は多くなく、かなりキーエンスらしい設計です。
営業の評価は、売上や受注などの「成果」だけで決める会社が少なくありません。SaaS企業でも、個人インセンティブを入れている会社もあれば、そうでない会社もあります。成果だけを見るのか、行動も見るのかは、会社ごとにかなり違います。
キーエンスは、行動量も評価に入れます。何件訪ね、どんな人に会い、どう次の手につなげたか。外報(訪問の前日と当日に書く帳票)が、その記録になります(詳しくはキーエンスの営業は、訪問の前日に何をしているのか)。
最初は「行動量」と「成果」がほぼ半々
評価の比率は、入社してからずっと同じではありません。岩田の在籍当時の実務では、次のように変わっていきました。
| 段階 | 評価の中心 | 行動量と成果の比率(目安) |
|---|---|---|
| 入社してすぐ | 行動量を、決められた水準で積めているか | おおむね半々 |
| グレードが上がる | 成果への比重が、少しずつ上がる | 成果の比率が上がっていく |
| 上位のグレード | 成果で評価される比重がさらに大きくなる | 成果の比率がさらに上がる |
※本稿の比率は、岩田がキーエンスに在籍していた当時の実務に基づく傾向です。現在の同社の運用を示すものではありません。
ここに「きつさの正体」があります。最初のうちは、結果が出るかどうかの前に、「やるべき行動をやったか」が毎日見られる。成果が出ていなくても、行動は評価に入ります。一方で、上のグレードに進むほど、行動だけでは評価されなくなります。
なぜ、行動量から評価するのか
行動量を最初に担保できる人は、立ち上がりも早い。これが岩田の経験です。
成果は、顧客や景気、商材の影響を受けます。入社したばかりの人が、自分の力だけで成果を出し続けるのは難しい。一方で、行動の量は、本人が自分で決められます。だから最初は、自分で決められる「行動量」を評価の軸に置き、慣れるにつれて成果を問う。この設計は、新人にとって「何をすればいいか」が分かりやすい、という面もあります。
岩田自身にとって、一番きつかったのは行動量だった
岩田が一番きつかったのは、行動量です。日々、水準にぶつかるかぶつからないかの、ぎりぎりのところでした。しかも、言われた通りにやらずに失敗しました。
そのあと、「一回、200分電話してみろ」と言われ、これを3日連続でやりました。本当によかったと思っています。仕事のスピードが速くなり、マネジメントになっても、自分のボリュームが落ちませんでした。
200分の電話とは、どういうものか。ちゃんと電話すると、1件あたりおよそ2分かかります。つまり、100件で200分のイメージです。キーエンスでは新規開拓もあれば、既存のお客様のフォローもあります。それらを順にかけていきます。岩田が新人のころは、新規開拓で「200分電話してみろ」と言われることが多かったそうです。マネージャーになってからは、部下の案件に電話することもあり、それをやっていると自然と200分くらいになりました。
「激務かどうか」は、あなたの入り方で変わる
行動量を評価される環境には、動きやすい人と、そうでない人がいます。精神的なプレッシャーも大きいため、そうしたものをあまり求めない人にとっては、厳しい環境です。最初に感じやすいことも、人によって違います。
| 最初から動きやすい人 | 最初に戸惑いやすい人 |
|---|---|
| 「何をやればいいか」が決まっているほうが動ける人 | 自分のやり方で、結果だけで評価されたい人 |
| 最初の数年で、営業の型を身につけたい人 | 行動を細かく見られることを、窮屈に感じる人 |
キーエンスを「激務」と感じるかどうかは、労働時間の長さよりも、行動を評価される環境で、最初の行動量をどう積むかで決まる面が大きいはずです。最初に戸惑う人は多いものの、行動量の積み方で変わる面があります。
労働時間はどうだったか。岩田がキーエンスにいた頃は、だいたい朝7時〜7時半の間に出社し、夜8時〜9時ごろに帰る日々でした。繁忙期というより、常にそのくらいでした。
転職先でも使える、評価の3つの質問
キーエンスに限らず、営業職の転職先を選ぶときは、面接で次の3つを聞いてみてください。評価の設計が、きつさの正体を決めます。
- 評価は、行動量と成果のどちらを見ますか。比率はどのくらいですか。
- 入社してすぐと、数年後で、評価の比率は変わりますか。
- 個人のインセンティブはありますか。あるなら、何に連動しますか。
どちらが良い悪いではなく、自分がどちらで力を出せるかを、入社前に確かめておくことが大切です。
まとめ
- 「激務」は、時間・数字・行動の3つに分けると、答えが出る
- 行動量を評価に入れる会社は多くなく、かなりキーエンスらしい設計
- 最初は行動量と成果がおおむね半々で、グレードが上がるほど成果の比率が上がる
- 「きつさ」の感じ方は、労働時間よりも「行動を評価される環境で、最初の行動量をどう積むか」で決まる
- 転職先では、評価の比率とその変化を、面接で聞く
補足:この記事は、岩田圭弘の在籍当時の経験に基づきます。公開情報の数字(年収・離職率など)は、出典によって揺れるため、本稿では扱いません。
