「営業で年収1,000万円」と聞くと、多くの会社がそうだと思いがちです。でも、上場企業の有価証券報告書(有報)で平均年収を調べると、1,000万円を超えていた会社は、確認した範囲ではM&A仲介の4社と、大手証券の2社だけでした。

この記事では、業界ごとの平均年収・平均勤続年数と、各社が公開している給与体系を並べます。見えてくるのは、年収の高さそのものより、「どんな仕組みで、その年収になるのか」の違いです。

先に結論

  • 平均年収が1,000万円を超えた会社は、M&A仲介4社と大手証券2社。不動産売買・保険代理店・人材紹介は、集計した会社がすべて1,000万円未満(500〜900万円台)でした。
  • 高年収には、2つの型がありました。短い勤続で高い年収(M&A仲介)と、長い勤続で高い年収(大手証券)です。
  • 給与体系は、固定給+成果に連動するインセンティブが中心です。ただし、公開されている情報の細かさは業界で大きく違います。
  • 数字は、営業職だけの平均ではありません。管理部門を含む全従業員の平均です。

見ている数字は、何か

この記事の年収は、有報の「従業員の状況」にある平均年間給与です。

  • 提出会社(または有報に載る主要な事業会社)の全従業員の平均です。営業職だけの数字ではありません。
  • 賞与と基準外賃金(残業代など)を含みます。
  • 持株会社が提出会社の場合は、有報に載る主要な事業会社の数字を使い、会社名を明記しました。
  • 勤続年数が短い会社は、若手が多い会社です。平均が高くても、長く働いた人の年収とは限りません。

比較の基準として、全産業の一般労働者の平均は44.4歳・勤続12.7年です(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」)。

業界別の全体像

業界集計した会社平均年収の幅平均勤続年数の幅1,000万円超
M&A仲介上場専業のうち7社696〜2,266万円2.1〜4.6年4社
証券(対面営業中心)売上上位5社と、ランキング掲載の2社671〜1,431万円9.3〜17.7年2社
不動産売買・仲介・販売売上上位から4社と、ランキング掲載の3社510〜944万円4.1〜10.2年なし
保険代理店売上上位から4社531〜768万円4.4〜7.75年なし
人材紹介確認できた4社519〜816万円3.9〜7.8年なし
営業の高年収は2つの型がある|平均年間給与×平均勤続年数の散布図
営業の高年収は2つの型がある|平均年間給与×平均勤続年数の散布図

選び方は、M&A仲介は検索で確認できた上場専業8社のうち年収の数字が使える7社、ほかは直近期の連結売上高の上位から選びました。社数が少ない業界があるため、これは業界の平均ではなく、「確認した会社の数字」です。

型① 成果に連動する割合が大きい|M&A仲介

M&A仲介は、平均年収の幅が最も大きい業界でした。同じ業界でも、696万円から2,266万円まで開いています。

会社平均年収平均年齢平均勤続
M&Aキャピタルパートナーズ2,265.8万円32.4歳3.30年
ストライクグループ1,521.0万円33.2歳2.5年
日本M&Aセンター(日本M&Aセンターホールディングスの有報)約1,300万円34.2歳4.6年
インテグループ1,185.9万円32.4歳2.6年
名南M&A765.4万円38.9歳3.8年
オンデック726.0万円36.63歳3.97年
ジャパンM&Aソリューション696.0万円35.9歳2.1年

給与体系は、固定給に、成約実績に連動するインセンティブを足す形が多く記載されています。

  • ストライクグループは、採用ページにインセンティブの支給料率が20〜30%(年4回支給)と記載しています。有報にも「成果主義に基づく給与制度」とあります。
  • インテグループの有報には、「完全成功報酬制のM&A仲介事業」「個人の成約実績に連動」と記載があります。
  • 一方、名南M&Aの有報には「インセンティブに偏らない報酬制度」と記載があり、同じM&A仲介でも考え方が分かれます。

読み方の注意: 平均勤続は2〜4年台と、全産業平均(12.7年)より8〜10年短く、平均年齢も10歳以上若い会社が多くあります。勤続が短い理由(採用増なのか、入れ替わりなのか)は、有報からは分かりません。高年収の裏で何が起きているかは、面接で直接確認するのが確実です。

型② 長く勤めて高年収になる|大手証券

1,000万円を超えた大手証券の2社は、勤続が15年台でした。

会社(有報の出所)平均年収平均年齢平均勤続
大和証券(大和証券グループ本社の有報)1,431.3万円38.7歳15.4年
野村證券(野村ホールディングスの有報)1,325.3万円42歳2か月15年10か月
岩井コスモ証券(岩井コスモHDの有報)904.0万円43.2歳17.1年
岡三証券(岡三グループの有報)812.7万円40歳4か月9年4か月
東海東京証券(東海東京FHDの有報)761.5万円37歳4か月12年5か月
今村証券(ランキング掲載)898.7万円37.1歳14.9年
東洋証券(ランキング掲載)671.3万円43.3歳17.7年

野村證券・大和証券の数字には、個人向けの営業だけでなく、法人・ホールセールなどの職種も含まれます。個人向け営業の平均ではありません。

給与体系は、固定報酬と業績に連動する賞与を組み合わせる形が、有報に書かれています(岩井コスモ証券は、月例給与・賞与・報奨金の三本立てと記載)。営業向けのインセンティブの率は、大手では確認できませんでした。

型③ 固定給+賞与+インセンティブ|不動産・保険代理店・人材紹介

この3業界は、確認した会社の平均がすべて1,000万円未満(500〜900万円台)でした。

不動産売買・仲介・販売

会社平均年収平均年齢平均勤続
エスコン790.2万円40歳10か月5年10か月
カチタス591.0万円32.3歳6.2年
飯田グループHD(主要事業会社の一建設の数字)586.3万円39.4歳8.9年
ケイアイスター不動産510.3万円32.8歳4.1年
トーセイ944.3万円35.7歳5.6年
コスモスイニシア934.3万円37.8歳10.2年
エスリード893.3万円32.8歳5.2年

トーセイ、コスモスイニシア、エスリードは、売上高の順位は上位ではありませんが、不動産業の平均年収ランキングに載る営業系の会社として加えました。

売上高の順位が下がった会社には、ランドネット(926.3万円・30.6歳・3.6年)、サンフロンティア不動産(768.3万円)、ムゲンエステート(748.7万円)があります。ランドネットの対象期は2025年7月期で、2026年10月下旬に次期の有報が出る見込みです。

オープンハウスグループは、有報の数字で比較できません。 提出会社が持株会社で、有報の提出会社の平均年収914.3万円(307名)は営業の実態を表さないためです。会社の採用ページには、新卒の営業が「入社3年で30%、5年で60%が年収1,000万円超」との記載があります。時点と母集団が分からない会社の記載として、ここに添えます。

カチタスの有報には「給与総額の約7割が固定給及び手当」と記載があり、固定給の比率が比較的高い会社です。エスコンの有報には、役割に応じた基準年俸と、成果連動の報奨金の二階建てと記載があります。

保険代理店

会社平均年収平均年齢平均勤続
FPパートナー768.0万円46.4歳4.4年
ブロードマインド624.1万円35.7歳6.9年
アドバンスクリエイト614.7万円37歳2か月7年9か月
アイリックコーポレーション531.1万円40.9歳5.0年

アドバンスクリエイトの有報には、全社統一の「固定給制」と記載があります。アイリックコーポレーションの採用ページには、固定給にインセンティブを別途支給すると記載があります。

人材紹介(人材紹介が主な上場会社で、確認できた4社)

会社平均年収平均年齢平均勤続
ジェイエイシーリクルートメント815.9万円35.0歳3.9年
クイック647.6万円30.3歳6.5年
MS-Japan543.1万円32.4歳5.4年
ジェイック518.8万円35.2歳7.8年

ジェイエイシーリクルートメントの採用ページには、年俸制に、年間予算100%時のパフォーマンスボーナス(年2回、達成率で変動)を含めた年収レンジが記載されています。クイックは派遣などを含み、MS-Japanは管理部門・士業に特化しています。人材紹介だけの平均ではない会社が含まれます。

参考|キーエンスは、どの型か

キーエンスの平均年収は、約2,178万円(第57期)、平均勤続は11.3年です。高い年収と、全産業平均に近い勤続年数の両方があります。ここまでの2つの型とは違います。

評価の仕組みも違います。岩田の見方では、行動量を評価に入れる会社は多くなく、かなりキーエンスらしい設計で、最初は行動量と成果がおおむね半々、グレードが上がるほど成果の比率が上がります。

給与体系を見るときの4つの確認点

高年収の求人を見るときは、次の4つを確認してください。

  1. 固定給の額と、成果給の条件。 想定年収の上限は、成果給を含むことがあります。
  2. 固定残業代が含まれているか。 含まれるなら何時間分か。時間あたりの額が変わります。
  3. 評価は、行動量と成果のどちらを見るか。 比率と、グレードによる変化。
  4. 勤続年数と年齢の分布。 平均が高くても、その会社で長く働く人がどれだけいるかは別です。

岩田の見方では、成約連動の世界で稼げる人と伸び悩む人を分けるのは、執着できるかどうかです。成約連動はかなりハードな世界です。自分のやりたいことがあり、その手段として頑張る、目的志向のある人は結果が出る。そうでないと厳しい、と岩田は言います。

まとめ

  • 平均年収が1,000万円を超えたのは、確認した範囲でM&A仲介4社と大手証券2社だけ
  • 高年収には、短い勤続で高い年収(M&A仲介)と、長い勤続で高い年収(大手証券)の2つの型がある
  • 給与体系は、固定給+成果に連動するインセンティブが中心。公開の細かさは業界で違う
  • 数字は営業職だけの平均ではなく、持株会社の場合は主要事業会社の数字を使っている
  • 求人では、固定給と成果給・固定残業代・評価の軸・勤続の分布を確認する
補足:数字は、各社の最新の有価証券報告書(EDINET、2026年10月5日時点)に基づきます。会社の採用ページ・求人の記載は、取得日時点の会社の記載で、実績を示すものではありません。現在の各社の制度・数字を示すものではありません。当社は有料職業紹介事業(許可番号 13-ユ-319082)を営んでいます。本記事の比較は、公開されている有報に基づくもので、特定の会社への応募を勧めるものではありません。