「今期はOKRでいきます」と言われた新任マネージャーが、次に聞くのはだいたい同じ質問だ。「で、何%取れば良い評価になるんですか」。
答えは、その質問の前提から間違っている。OKRは評価のための数字ではない。チームの熱量を上げるための目標の型だ。
OKRとは
OKR(Objectives and Key Results)は、「目指す姿(Objective)」と「そこに近づいたと言える数値(Key Results)」をセットで管理する目標設定のフレームワークだ。原型は1970年代、インテルの元CEOアンディ・グローブが自著『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』で示した目標管理の考え方にある。それをインテル出身の投資家ジョン・ドーアが1999年、創業間もないグーグルに持ち込んだことで、シリコンバレー発の目標管理手法として世界に広まった。
- Objective:定性的で、野心的な「目指す姿」。数字である必要はない。
- Key Results:Objectiveに近づいたことを示す、測定可能な数値目標。1つのObjectiveに対して3〜5個。
例えば「日本を代表する営業チームになる」がObjectiveなら、「売上¥120M/Q」「エンタープライズ受注20件/Q」「営業人員15名体制」がKey Resultsになる。
部門別の具体例
OKRは部門ごとに設計する。共通するのは「Objectiveは抽象的な一文、Key Resultsは数値」という構造だけだ。
| 部門 | Objective | Key Resultsの例 |
|---|---|---|
| マーケティング | 問い合わせが止まらないパイプラインを作る | 新規MQL数 月300件、MQL→SQL転換率30%以上 |
| 人事 | 入ってよかったと全員が言える会社になる | 採用充足率100%、早期離職率10%以下 |
| 開発 | リリースを恐れないチームになる | デプロイ頻度 月20回、バグエスケープ率0.5%以下 |
どの部門も、Objectiveは数値を入れずに、Key Resultsで初めて数値化するという型を守っている。
良いObjective・良いKey Resultsの条件
Objectiveは「数字」ではなく「人を動かす言葉」で書く。KGIの数値目標をそのままObjectiveに置いてしまう失敗が最も多い。
| 弱いObjective | 強いObjective | |
|---|---|---|
| 営業 | 売上を前年比120%にする | 日本を代表する営業チームになる |
| CS | 解約率を下げる | 顧客が「他社に紹介したい」と言うサービスになる |
弱い例は、実はKey Resultsの粒度だ。Objectiveは覚えやすく、チームの誰が読んでも「それを目指したい」と思える一文にする。
Key Resultsは逆に、測定可能であることが絶対条件になる。「顧客満足度を高める」はKey Resultsとして機能しない。「NPSを+20ポイント改善する」のように、期末に達成したかどうかを誰が見ても判定できる数字まで具体化する。
OKRの運用サイクル
OKRは四半期を基本単位に、次の4ステップで回す。
- Week1:設定・公開 ObjectiveとKey Resultsを決め、全社に公開する。誰のOKRも見える状態にする。
- 週次:チェックイン 各Key Resultsの進捗を0.0〜1.0のスコアで更新する。ここで初めて「今どのくらい進んでいるか」が数字で見える。
- 期中:テコ入れ スコアが低いKey Resultsがあれば打ち手を議論する。目標自体は変えないのが原則。
- 期末:振り返り スコアを確認し、次の四半期のOKRに反映する。
