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採用・人事KPI2026-06-21

離職を防ぐ定着・組織KPIの設計法|離職率だけでは手遅れになる「定着の先行指標」と1on1の作り方

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KPIを「測るだけ」から「動かす」に変えるためのフレームワーク全体像を15ページにまとめた資料です。

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本記事は50社以上の成長支援を手がけるKPIコンサル・岩田圭弘が解説します。

「離職率を見ていたのに、辞めてから気づいた」

人事のKPIを「離職率」や「エンゲージメントスコア」に置いている企業は多い。だが、この2つは性質が違う。離職率は遅行指標——結果が出たあとにしか動かない。一方でエンゲージメントスコアは本来「先行指標」であり、行動を変えれば動かせる数字だ。これを離職率と同列の「結果KPI」として掲げるのは、少し筋が違う。

離職率が上がったと気づいた時には、人はもう辞めている。だから人事のKPI設計で本当に重要なのは、「離職の手前で何を見るか」——予兆をどう捉えるかだ。

なお、人事KPIのうち採用ファネル(応募・面接・内定承諾)の指標採用KPI完全ガイド|採用ファネル18指標で詳しく扱う。本記事はその先、「入社した人をどう定着させるか」(離職防止・組織)に焦点を絞って解説する。

人事KPIが形骸化する3つの原因

  1. 結果指標しか見ていない:離職率・充足率だけを追い、都度手遅れになる
  2. 「分析の切り口」がない:全体の離職率は見ても、部署別・等級別・入社年次別に分解していない
  3. 時間軸が混ざっている:先行指標(1on1・サーベイ)と遅行指標(離職)を同じ会議で並べてしまう

強い人事は、この逆をやっているだけだ。

データで見る日本の離職率:規模が小さいほど高い

厚生労働省「雇用動向調査」によると、令和5年(2023年)の全国の離職率は15.4%(一般労働者12.1%/パートタイム労働者23.8%)。コロナ禍で入職・離職ともに落ち込んだが、R4(2022年)以降は回復基調にある。

入職率・離職率の推移(H27〜R5年)
入職率・離職率の推移(H27〜R5年)

さらに、新規学卒者の就職後3年以内離職率を事業所規模別に見ると、規模が小さいほど明確に高い。大卒では1,000人以上の24.7%に対し、5人未満は56.3%にのぼる。

事業所規模別の3年以内離職率
事業所規模別の3年以内離職率

産業別に見ると、宿泊・飲食などの生活サービス系が突出して高く、20%超が常態化。一方でIT(情報通信業)・製造業は11%前後と比較的低い。

産業別 離職率ランキング
産業別 離職率ランキング

スタートアップや中小企業は、この統計が示すとおり構造的に離職率が高い(スタートアップでは20%前後になることも多い)。人員に余裕がなく、一人の離職インパクトも大きいからこそ、結果である離職率を眺めるのではなく、次に述べる「定着の先行指標」で予兆を捉えることが効いてくる。

出典:厚生労働省「令和5年雇用動向調査」「新規学卒就職者の事業所規模別 就職後3年以内離職率」

人事KPIの全体像:3層で設計する

人事KPIも、最終ゴール(KGI)から逆算して三層で組む。

指標の例役割
KGI(最終)定着率・人時生産性事業の結果
中間KPI(遅行)離職率・採用充足率KGIを分解した結果
先行KPI(行動)1on1実施率・サーベイスコア・オンボ完了率今週・今月動かせる数字

人事の現場が見るべきは、一番下の先行KPIだ。

人事の主要KPIとベンチマーク目安

※業種・規模で大きく変わるため、あくまで一般的な目安。

人事の主要KPIとベンチマーク目安
人事の主要KPIとベンチマーク目安
KPI種別目安
年間離職率遅行業種・規模で大きく異なる。自社の過去実績を基準に
入社1年以内の早期離職率遅行自社実績と比較し「異常検知」に使う
エンゲージメントスコア(eNPS等)先行業種平均と比較
1on1実施率先行90%以上
採用充足率遅行計画比100%

「自社が普通かどうか」を知るだけで、打ち手は変わる。

離職の「先行指標」をどう作るか

人はある日突然辞めるわけではない。「静かに離れていく」サインは、離職の数ヶ月前に必ず出ている。

  • パルスサーベイ(後述)の気分が「雨」続き
  • 1on1での発言量・前向きさの低下、キャリアの相談が増える
  • 勤務時間(残業)の急増、または急減
  • 有給取得の異変(急に増える=転職活動/全く取らない=疲弊)
  • 社内コミュニケーション(チャット・会議発言)の減少
  • 遅刻・欠勤など勤怠の乱れ

これらを組み合わせて指標化し、サインが出た社員に上司・人事が先手を打つ。KPIを結果から先行にずらすだけで、手を打てるタイミングが変わる。

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KPI Maturity Model の自社診断と Implementation Checklist(20項目)を収録。形骸化しないKPI設計の実装手順を一冊で。

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離職予兆を掴む実践:パルスサーベイ

離職の予兆検知で私たちがよくやっていたのは、パルスサーベイ——毎朝の出社時に「晴・曇・雨」のような今の気分を一つ入力してもらう、軽い仕組みだ。

年1回の重厚なサーベイと違い、毎日の小さな変化を捉えられる。ポイントは回答先を人事にすること。上司には言いづらい不調も、人事になら比較的話しやすい。

運用はシンプルだ。

  • 「雨」が連続している社員を予兆として検知する
  • 連続したら、上司ではなく人事が面談を設定する
  • さらに、入社からの日数(例:30日・90日・半年)で定点面談を組む——不調が顕在化する前に、こちらから接点を作る

パルスサーベイの「雨」連続を先行KPIに、人事面談の実施を行動として運用に組み込むと、離職は退職届が出る前に止められる。

離職予兆を掴むパルスサーベイの流れ
離職予兆を掴むパルスサーベイの流れ

KSFは「定着者と離職者の比較」から見つける

人事のKSF(重要成功要因)は、目標からの逆算では見つからない。

長く定着している社員と、早期離職した社員を並べる。そこに必ず差が出る。

例:「入社90日以内に上司との1on1を5回以上受けた社員は、1年定着率が明らかに高い」

この差こそKSFだ。つまり「オンボーディング期の1on1密度」を中間KPIとして置けば、早期離職は上流で防げる。

事例:離職率を「追う」から「予測する」へ

ある成長企業では、四半期ごとに離職率を経営会議で報告していたが、毎回「なぜ辞めたか」の事後分析に終始していた。

Before:KPIは離職率(遅行指標)のみ。退職届が出てから慌てて面談。早期離職率は20%超。

After:定着社員と離職社員を比較し、「配属後30日の1on1密度」と「初期の役割の明確さ」が分かれ目と特定。1on1実施率を先行KPIに置き、新人の上司に週次でアラート。1年後、早期離職率は12%まで低下。

人事KPI設計でよくある失敗3パターン

① エンゲージメントサーベイを取って満足する

スコアを測っただけで、低下部署への「アクション」が決まっていない。測定は行動の入口でしかない。

② 全社一律の離職率だけ見る

部署・等級で離職の構造は全く違う。平均だけ見ると、最も守るべきハイパフォーマー層の流出を見逃す。

③ 採用数だけをKPIにする

充足率(量)だけ追うと、定着しない採用が増える。採用の質(入社後活躍・定着)とセットで見る。

よくある質問(FAQ)

Q. エンゲージメントスコアと離職率、KGIにすべきはどちらですか?

A. どちらもKGIではなく、その上の「定着率・生産性」がKGI。エンゲージメントは先行指標、離職率は遅行指標として役割を分けます。

Q. 離職の先行指標は何で作ればいいですか?

A. 自社の「定着者と離職者の差」から逆算します。1on1の頻度・勤怠変化・サーベイ特定設問・社内コミュニケーション量などを重み付けして組み合わせます。

Q. 中小企業でも人事KPIは必要ですか?

A. むしろ少人数ほど一人の離職インパクトが大きい。複雑な仕組みは不要で、「早期離職を防ぐ先行指標1〜2個」から始めれば十分です。

Q. 1on1やサーベイ以外に、離職の先行指標になるものは?

A. 勤怠・行動ログが有効です。残業時間の急変、有給取得の異変、遅刻・欠勤の増加、社内チャット/会議発言の減少、研修・社内イベントへの参加率低下、同僚や上司の離職(連鎖)など。「本人が言葉にする前に数字に出る」のが勤怠系指標の強みです。

まとめ

人事のKPIは、離職率やエンゲージメントスコアの結果を眺めるだけでは動かせない。離職の数ヶ月前に出る先行指標を設計し、「動かせる数字」に変えることが、定着を上流で改善する方法だ。

  • 離職率(遅行)とエンゲージメントスコア(先行)を混同せず、先行指標(パルスサーベイ・1on1実施率・勤怠変化)を設計する
  • KSFは「定着者と離職者の比較」から発見する
  • 部署・等級・入社年次で分解し、平均に隠れた異変を見る

採用ファネル側は採用KPI完全ガイド、KPI設計の全体像はKPI設計完全ガイドもあわせてご覧ください。

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