ガイド2026-07-07

KPIを変えなくても全体が改善する——ミックス(配分)を変えるだけの戦略

岩田 圭弘岩田 圭弘Exgrowth株式会社 代表取締役

この記事は、KPIの方法論の流れのうち「改善」の話です。全体像は KPIとは?意味と読み方を簡単に へ。

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著者:岩田圭弘(Exgrowth株式会社 代表)

はじめに——「個人の成約率を上げる」だけでは限界がある

KPI改善の打ち手として、多くの現場で最初に挙がるのは「担当者のスキルアップ」や「トークスクリプトの改善」だ。しかし、実際に動かしてみると、成約率や通過率が1〜2ポイント上がるだけで、全体の数字には大して影響しないという経験をしたことはないだろうか。

私がKPIコンサルティングの現場で何度も目にしてきた「改善が進まない会社」には、ある共通点がある。それは、「各担当者・各チャネルの数値を上げようとして、配分を変えることに気づいていない」という点だ。

この記事では、各セグメントのKPI値は一切変えずに、シェア(配分)を変えるだけで全体数値を大幅に改善できる「KPIミックス」の考え方と、営業・採用・マーケティングへの具体的な適用方法を解説する。


KPIミックスとは何か——「配分を変える」という発想

KPIミックス:全体KPI=Σ(KPI値×シェア)
KPIミックス:全体KPI=Σ(KPI値×シェア)

KPIミックスとは、次の式で表される考え方だ。

全体のKPI = Σ(各セグメントのKPI値 × セグメントのシェア)

重要なのは、「AのKPI値を上げる努力」をしなくても、「Aへのシェアを増やすだけ」で全体数値は上がるという点だ。


営業での実例——大手訪問シェアを変えるだけで全体移行率+9pt

訪問シェアを変えるだけで全体移行率+9pt
訪問シェアを変えるだけで全体移行率+9pt

ある営業チームの「提案移行率(初回面談から提案書提出に至る率)」を改善した事例を紹介する。

現状分析:

セグメント移行率訪問シェア寄与
大手企業50%30%15%
中小企業20%70%14%
全体——29%

私が提案したのは別のアプローチだ。「大手への訪問シェアを30%から60%に変える」。

改善後:

セグメント移行率訪問シェア寄与
大手企業50%60%30%
中小企業20%40%8%
全体——38%(+9pt)

大手の移行率50%も、中小の移行率20%も、一切変えていない。変えたのは訪問シェアだけだ。それだけで全体の提案移行率が9ポイント改善した。

  • Primary KPI:大手企業への訪問シェア(現状30% → 目標60%)
  • KDI:大手顧客への日次訪問件数・電話件数

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採用での実例——エージェント依存から脱却すると通過率+6pt

現状分析:

チャネル通過率応募シェア寄与
ダイレクトリクルーティング(DR)55%20%11%
エージェント30%30%9%
採用イベント45%50%22.5%
全体——42.5%

改善後:

チャネル通過率応募シェア寄与
DR55%50%27.5%
エージェント30%10%3%
採用イベント45%40%18%
全体——48.5%(+6pt)

各チャネルの通過率はまったく変えていない。シェアを変えただけで、書類通過率が6ポイント改善した。

  • Primary KPI:DR・イベント経由の応募シェア(現状70% → 目標90%)
  • KDI:週次のDRスカウト送信数・採用イベント出展数

4ステップの汎用フレームワーク

KPIミックスの汎用4ステップ
KPIミックスの汎用4ステップ

Step 1:ボトルネックKPIを特定する

全体のファネルを可視化し、最も低い転換率・通過率はどこかを探す。

Step 2:切り口別に分解する

そのKPIを複数の切り口でセグメント分解する。「顧客規模別(大手/中小)」「チャネル別(DR/エージェント/イベント)」など。

Step 3:Primary KPIをシェアとして設定する

KPI値の高いセグメントへのリソース配分比率を、Primary KPIとして設定する。「何%にする」という明確な目標値を置く。

Step 4:KDIで実行を日次・週次で確認する

Primary KPIを達成するために必要な日々の行動をKDIとして設定し、実際に配分が変わっているかを数字で確認する。


どの業務にも使える——応用一覧

部門別のKPIミックス応用一覧
部門別のKPIミックス応用一覧
部門ボトルネックKPI分解の切り口Primary KPI(シェア)
営業訪問→提案移行率顧客セグメント(大手/中小)大手へのアポ獲得シェア
採用書類通過率応募チャネルDR・イベント経由シェア
マーケCVR流入経路(SEO/広告/SNS)高CVRチャネルへの流入シェア
CS更新率・アップセル率顧客セグメント(規模・業種)高更新率セグメントへの担当配分

まとめ

個人のスキルアップや転換率の改善は重要だ。しかしそれだけでは全体数値の改善に時間がかかりすぎる。KPIミックスの発想を持てば、今の担当者の能力・今のチャネルの品質のまま、配分を変えるだけで全体数値を即座に動かすことができる。

改善の第一歩は「分解」だ。全体の数字だけを見ていては、高パフォーマンスのセグメントが埋もれたままになる。まず切り口を変えて分解し、どこにシェアを集中させるべきかを見極める——そこから始めてほしい。


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本記事は「各セグメントのKPI値は変えず、シェア(配分)を変えるだけで全体が動く」というミックスの計算に特化しています。

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