「マーケが頑張っているのに売上が伸びない」——この問題の多くは、マーケティングのKPIがリード数で止まっていることに原因があります。
リード数をKPIにした瞬間、マーケは「とにかくリードを集める」方向に最適化されます。質の低いリードが量産され、営業は対応に疲弊し、ROIは下がり続ける。50社以上の支援で見てきた、最も多いパターンです。
マーケティングKPIは面談数と売上(受注金額)を起点に設計するのが正解です。この記事では、リード獲得からROI計測まで、一気通貫のKPI設計を解説します。
1|マーケティングKPIの全体像
マーケティングのKPIは、リードから受注まで一本のファネルで管理します。
| ステージ | 指標 | 定義 |
|---|---|---|
| 認知・流入 | リード数 | 獲得した見込み顧客の総数 |
| 選別 | MQL数 | マーケ基準で営業に渡せると判断したリード数 |
| 商談化 | 面談数 | 実際に商談が設定された件数 |
| 検討化 | 展開数 | 担当者が検討意思を表明した件数 |
| 成果 | 受注数・受注金額 | 最終アウトカム |
| 効率 | ROI・LTV/CAC | 投資対効果の評価 |
重要なのは、マーケが「面談数と受注数」まで責任を持つことです。リード数で止めると、営業との分断が起きます。面談数はマーケ×ISの共同責任、受注数はマーケ×IS×FSの共同KPIとして設計することで、「リードは渡した、あとは営業の問題」という分断をなくせます。
2|リードスコアリング:属性×行動の4象限
:属性情報×行動情報
全てのリードを同列に扱ってはいけません。リードの質を評価するためにスコアリングを設計します。
スコアリングの2軸
上のマトリクスの各象限に対応します。
| 軸 | 内容 | 取得方法 |
|---|---|---|
| 属性情報 | 企業規模・業種・役職・地域 | フォーム入力・展示会名刺 |
| 行動情報 | 資料DL・ページ閲覧・メール開封 | MA・アクセス解析 |
属性スコア+行動スコアの合計で閾値を超えたものをMQLとして営業に渡すのが基本設計です。
展示会など「属性情報しかわからない」ケース
展示会やセミナーで獲得した名刺は、行動情報がゼロの状態です。このとき、属性情報だけでスコアリングし、ティア分けして渡す方法を取ります。
【展示会リードのティア分け例】
Tier A(即アプローチ)
→ 決裁者 × 自社ターゲット業種 × 従業員300名以上
Tier B(ナーチャリング後アプローチ)
→ 担当者レベル または ターゲット外業種
Tier C(メルマガのみ)
→ 学生・個人・競合
Tier Aはインサイドセールスが即架電、Tier Bはメール→反応があれば架電、Tier Cはメルマガで温め続ける。この3段階で属性ベースのリードを無駄なく処理できます。
3|施策ごとのROI計測:MRR/ARRベースかLTVベースか
施策のROIを計測するとき、何を分母に置くかで投資判断が大きく変わります。
MRR/ARRベースの評価
初年度の契約金額(MRR×12 or ARR)を回収基準にする方法です。SaaSでチャーンが高い・LTVが読みにくい初期フェーズに向いています。
例:展示会出展費用 100万円
→ 獲得リード 50件
→ MQL 15件
→ 受注 3件 × ARR 60万円 = 180万円
→ ROI = 180万円 ÷ 100万円 = 1.8倍(初年度回収)
LTVベースの評価
チャーンが低く、LTVが安定している商材では、LTVで投資判断します。短期では赤字に見える施策でも、LTV換算で黒字になるケースは多いです。
例:タクシー広告 月300万円
→ 経由問い合わせ 20件/月
→ 受注 2件/月 × ARR 120万円 = 240万円
→ LTV(平均3年)= 360万円 × 2件 = 720万円
→ 月次ROI = 720万円 ÷ 300万円 = 2.4倍(LTVベース)
どちらのベースで評価するかを先に決めてから施策を承認する。これを怠ると、終わった後に「どこで判断するか」で揉めます。
4|LTV/CAC・CAC Paybackで効率性を管理する
ROIの計測と並行して、効率性の指標を常にモニタリングします。
LTV/CAC:具体例で理解する
LTV/CACは「1人の顧客を獲得するのに使ったコストが、その顧客の生涯価値の何倍になって返ってくるか」を示す指標です。
【具体例:月額10万円のSaaSプロダクト】
CAC(顧客獲得コスト) = 50万円
月次MRR = 10万円
チャーン率(月次) = 2%
LTV = MRR ÷ チャーン率 = 10万円 ÷ 0.02 = 500万円
LTV/CAC = 500万円 ÷ 50万円 = 10倍 ✓(目安:3倍以上)
LTV/CACが3倍未満の場合は要注意です。マーケ・IS・FSすべてのコストを回収できていないサインです。チャーン改善(LTV↑)かCAC削減のどちらを優先するかを判断します。
チャーンが高い段階でCAC投資を増やすのは最悪の選択です。バケツに穴が開いたまま水を注ぐ状態になります。
CAC Payback:具体例で理解する
CAC Paybackは「投資したCACを何ヶ月で回収できるか」です。キャッシュフローに直結します。
【具体例:月額10万円・グロスマージン70%のSaaS】
CAC = 50万円
月次グロスマージン = 10万円 × 70% = 7万円
CAC Payback = 50万円 ÷ 7万円 = 約7ヶ月 ✓(目安:18ヶ月以内)
→ 7ヶ月でCACを回収し、以降は純粋な利益に転換
Paybackが18ヶ月を超える場合、成長投資のためのキャッシュが枯渇しやすくなります。展示会・タクシー広告など一時的に投資が増える時期は、Paybackが伸びることを事前に経営に説明しておくことが重要です。
【Payback悪化のケース:タクシー広告300万円/月を開始した場合】
翌月のCAC上昇:50万円 → 80万円
Payback:7ヶ月 → 11〜12ヶ月
→ 許容範囲内かを経営と事前合意しておく
