スタートアップを成長させるとき、最初に何から着手すべきなのか。シリーズA、B、Cそれぞれで投資家にどう見られるのか。そして、ゼロイチ立ち上げから400人規模に至るまで、組織はどんな壁にぶつかるのか。
本記事は、私が実際に経験した「スタートアップ成長のリアル」を、Q&Aインタビュー形式でまとめたものです。抽象論ではなく、現場での試行錯誤や、実際に効いた仕組み、失敗から学んだ教訓をそのままお話ししています。
Q1. スタートアップで最初に着手すべきことは何でしょうか?
最初にやるべきことは、もちろん事業戦略の策定です。市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3Cを分析し、自社がどういうバリューポジションを築けるかを明確にする。そしてターゲットを定め、どう訴求していくかを決める。ここは王道です。
ただし、僕があえて強調したいのは、「CRMの導入」です。これはよく後回しにされるんですが、初期からやっておかないと絶対に後で苦労します。CRMは「営業を管理するツール」以上の意味を持つからです。CRMを導入し、KPIを入力して数字を可視化していくことは、「事業が再現性を持って成果を出せている」ことの証拠になります。社内マネジメントだけでなく、投資家に示す上でも非常に強い説得力を持ちます。
しかも、後から導入しようとすると本当に大変です。データ入力をしてこなかった人に「明日から入力してください」と言っても、習慣化は難しい。「楽な状態から大変なことに戻る」のは本能的に抵抗します。だから、文化として定着させるなら立ち上げ初期しかないんです。


Q2. シリーズA、B、Cでそれぞれ最も重視される論点は?
フェーズごとに投資家の目線はまったく違います。
シリーズAでは、「市場の魅力度」と「経営チームのケイパビリティ」が最重要。市場が大きいのか、ニッチでも圧倒的シェアを狙えるのか。その市場で競合に勝ち切れる経営チームか。この2つがしっかりしていないと、どんなに事業計画を立てても説得力がありません。
シリーズBになると、投資家が最も見たいのはトラクションです。「この事業は再現性を持って成長できるのか」という証拠を、受注数や売上といった数字で示さなければいけません。
シリーズCでは、拡大戦略と資金調達の明確さが問われます。単一事業をさらに伸ばすのか、複数事業に広げるのか、海外進出やM&Aも絡めるのか。「どんな施策で売上をここまで持っていくのか」と、そのための資金計画が明確に描かれていなければなりません。
まとめると、
- A = 市場とチーム
- B = トラクション(再現性)
- C = 拡大戦略と資金計画
そしてどのフェーズでも共通して見られるのは、「このチームならやり切れる」と思わせられるか。その証拠となるのがKPIです。

Q3. ゼロイチの立ち上げはどのように進めましたか?
正直に言うと、最初は全部自分でやっていました。リストを作り、電話をかけ、メールを送り、Webで発信してアポを取る。朝5時半に起きて情報発信し、日中は訪問。泥臭く、とにかく量をこなす。これがゼロイチの現実です。
そこから、知り合いの業務委託やインターンを巻き込み始めました。僕が特にやったのは「仕組み化」です。インターンでも成果が出せるように、会話の録音を徹底。アポイントの電話がうまくいかなかった時に「どこで詰まったのか」「どう切り返せばよかったのか」を全員で聞き、改善ポイントを抽出。これを朝礼などで共有し、切り返しパターンを仕組みとして蓄積していきました。
つまり、ゼロイチ立ち上げは「最初は泥臭く全部やる」→「型をつくって仕組み化する」という二段階です。

Q4. カスタマーサクセスを仕組み化する際に大事なポイントは?
CSは「人によってやり方が違う」になりがちですが、それだとスケールしません。最初から仕組みに落とし込むことが重要です。
一番大事なのはオンボーディング。ここで顧客が「このサービスは役立つ」と思えなければ、その後の解約率は一気に上がります。オンボーディングを定義し、定量的に評価することが第一歩です。
その後はアダプション(活用) → エクスパンション(拡大)。役割分担を曖昧にすると「誰もやらない領域」が生まれます。また、ヘルススコアを導入して顧客を「ハイ/ミドル/ロー」に分類することも欠かせません。ローに関してはテックタッチで効率的に対応し、CSの人数を比例的に増やさなくてもいい状態を作る。
最終的に見るべき指標はNRR(ネットリテンションレート)。解約を差し引いても既存顧客からの売上が110〜120%で伸びている状態を目指します。

Q5. 採用で最も重視したスキルは?
僕が営業採用で最も重視していたのは「聞く力」です。多くの人は「話す力」ばかりを見がちですが、営業で成果を分けるのは「聞く力」なんですよ。相手の課題や価値観をどれだけ正確に引き出せるか。
だから面接では「タクシー好きの人を電車好きに説得してください」という課題を出しました。ダメなパターンは「タクシーのここが不便で、電車はこんなに便利」と一方的に話す人。これでは相手は納得しません。
一方で、まず「なぜタクシーが好きなのか」を聞き、その理由を踏まえて「それなら電車にもこういうメリットがある」と説明できる人は、営業でも必ず成果を出します。聞く力がある人はどんな商材でも売れる。これが僕の採用哲学でした。

Q6. 採用で避けるべき人物像は?
一言で言うと、「自責志向がない人」です。
スタートアップでは「人のせいにできる環境」がいくらでもあります。組織が整っていないので「マーケが悪いから」「CSが弱いから」と言おうと思えばいくらでも言える。でも、そういう人は伸びません。
僕は面接で必ず過去の失敗談を聞きました。その時に「環境のせい」と言う人はアウト。逆に「自分がこう反省して、次にこうアクションを変えた」と言える人は合格です。

Q7. マーケ・営業・CSの連携はどう作りましたか?
マーケ・営業・CSは縦割りになりやすい。実際、多くの会社がここで失敗します。僕が徹底していたのは、「オペレーションヘッドが一気通貫で見る」という仕組みです。マーケはリード獲得、営業は受注、CSは継続とアップセル…と分けてしまうと、「これは誰の責任?」という穴が生まれる。
最初からマーケ→営業→CSを1本の線で管理する。ヘッド1人が責任を持って全体を繋げば、縦割りの壁がなくなり、成果もスピードも一気に上がります。

Q8. 成長フェーズで効いた施策は?
一番効いたのは「ターゲットの精度を上げること」です。プロダクトが未成熟な段階でエンタープライズに行くと、導入しても満足度が低く、逆にリスクが高い。だから最初はSMBで磨きました。プロダクトが十分に成熟してから、初めてエンタープライズにシフト。
その時も「エンタープライズ全体」ではなく、さらに絞り込みました。プライム上場企業の中でも時価総額で層を切って「この層ならニーズが高い」と仮説を立てて攻めました。結果として、単価が跳ね上がり、成長を牽引できました。

Q9. 解約率を下げるためにやったことは?
まずはヘルススコアをチェック。数字で顧客の状態を把握し、悪化の兆候が出たら早めに手を打つ。次に、粘着性の高い機能を浸透させる。例えば会計ソフトならOCR。多拠点で利用されるので、スイッチングコストが上がり、解約しにくくなります。
さらに重要なのは解約理由の分類。
- コントロール可能な理由(オンボーディングの失敗、活用不足など)
- コントロール不可能な理由(会社の方針変更、予算カットなど)
この2つを分けて、可能な領域に人を割いて改善していく。「仕組み+人」の両方が必要です。











