サマリー
- 査読学術誌に掲載された研究は、購買担当者が売り手企業や営業担当者への信頼をどのように形成するかを、5つの認知プロセスとして体系化している。
- 200名超の購買担当者を対象とした実証分析では、信頼は「今後も取引を続けたいという意向」には強く影響する一方、購買実績や取引条件を統制すると、現在進行中の商談の選定そのものには直接影響しないという結果が示されている。
- つまり信頼構築は、目先の受注を決める要因というより、次の商談・継続取引の土台をつくる投資として捉えるべきである。
学術研究:信頼はどう形成され、何に効くのか
Doney, P. M., & Cannon, J. P. (1997). "An Examination of the Nature of Trust in Buyer-Seller Relationships." Journal of Marketing, 61(2), 35-51.
本論文は、産業財の購買担当者が供給企業とその営業担当者への信頼をどのように形成するかを、複数の学問領域の理論を統合して5つの認知プロセスに整理した研究である。200名を超える購買担当者を対象とした実証データによって理論モデルが検証されており、B2Bにおける信頼研究の基礎文献として広く引用されている。
分析の結果は、実務家にとって示唆に富む。信頼(供給企業への信頼、および営業担当者への信頼)は、買い手が「今後もこの供給企業と取引を続けたい」という将来的な意向に強く影響することが確認された。一方で、過去の取引実績や供給企業の実際のパフォーマンスを統制すると、信頼そのものは現在進行中の商談における供給企業選定の意思決定には直接影響しないという結果も同時に示されている。
つまり信頼は「今回の商談を決める決め手」ではなく、「次回以降の取引継続を左右する土台」として機能している可能性が高い。
だから、営業組織は何をすべきか
- 信頼構築を「今回の受注のための活動」と位置づけない
- 実績とパフォーマンスの提示を怠らない
- 信頼構築の成果指標を「受注率」ではなく「継続率・紹介率」に置く
