KPI設定でつまずく会社の多くは、「商談化率を上げよう」のようなそれ自体は行動を変えない目標を立てて止まってしまいます。本記事では、KGIから分解し、ボトルネックを特定 → Primary KPI(最も効く施策)→ KDI(日々の行動)まで一直線に落とす設定法を、5ステップ・部門別の記入例つきで解説します。支援50社以上で使ってきた、形骸化させない設定の型です。
KPI設定とは:まず用語を整理する
KPI設定とは、最終ゴール(KGI)を、現場が日々動かせる指標まで分解していく作業です。登場する用語を整理します。
| 用語 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| KGI | 最終ゴール | 年間売上 1.2億円 |
| プロセスKPI | ゴールに至る活動量・転換率 | 面談数・展開率・受注率 |
| ボトルネックKPI | プロセスの中で課題の一点(診断) | 展開率 |
| Primary KPI | それを上げる、最も効く施策の指標 | ショールーム来店件数 |
| KDI | Primaryを動かす日々の行動 | 商談後の来店依頼 |
世間では「KGI→KSF(重要成功要因)→KPI」と説明されますが、KSF(例:商談化率の向上)はそれ自体が曖昧で、具体的な行動を変えません。そこで本記事では、KSFを「ボトルネックKPI → Primary KPI → KDI」の3層に分けて、行動まで落とせる形にします。用語の基礎はKPIとは?とKGIとKPIの違いもご覧ください。
KPI設定の5ステップ
ステップ① KGIを決める――最終ゴールを1つに定めます。売上か、粗利か、貢献利益か。「いつまでに、いくら」を数値で明確にします。
ステップ② KPIに分解し、ボトルネックを特定する――売上=単価×受注件数、受注件数=面談数×展開率×展開獲得率、というようにプロセスKPIへ分解し、どの転換率が効いていないか(ボトルネック)を見極めます(まずは仮説でOK。特定法は後述)。
ステップ③ Primary KPIを決める――ボトルネックを上げる施策はいくつもあります。その中で最も効く確率が高い施策の指標を1つ選び、Primary KPIに据えます。
ステップ④ KDIに落とす――Primary KPIを上げるための、自分で100%コントロールできる日々の行動量(KDI)を決めます。
ステップ⑤ 振り返り・軌道修正をルール化する――「達成率80%未満で見直す」のように乖離アラートの閾値を決めておきます。これが形骸化を防ぎます。
ボトルネックを決めた後の3層:診断 → 施策 → 行動
ここが、競合の記事が書いていない核心です。「ボトルネックが分かった、で、何をするのか?」――ここを私は3層に分けて整理します。
- ボトルネックKPI(診断)――プロセスKPIの中で、どの転換率が最も効いていないかを特定する。例:展開率(転換率)が低い
- Primary KPI(施策)――そのボトルネックを上げる施策の指標。施策は複数ありえます(体験誘導を増やす/対面商談を増やす/ショールーム来店を増やす…)。その中で最も効く確率が高い一つを選ぶ。数値で把握できればベスト、無ければ仮説・ベストプラクティスで置く。例:ショールーム来店件数
- KDI(行動)――Primary KPIを上げる、自分で100%コントロールできる具体行動。例:商談が終わった後に、既存顧客へ来店(紹介)依頼ができたか
KGI → プロセスKPI分解 → ボトルネックKPI → Primary KPI → KDI。この鎖でつなぐと、「商談化率を上げよう」で止まらず、今日やるべき行動まで一直線に落ちます。各概念の背景はKPIを武器にする実践論と営業マネジメントの実行設計で解説しています。
ボトルネックの見つけ方:ベンチマーク比較か、KPIを回して発見
ボトルネック(=真の課題)の見つけ方には、2つのモードがあります。
| ベンチマークがある(型のある業務) | ベンチマークがない(前例のない打ち手) | |
|---|---|---|
| 例 | BtoB営業の標準ファネル | 新規事業・新しい誘導施策 |
| 見つけ方 | 実績をベンチマークと比較し、下回る指標=ボトルネック。即特定できる | KPIを計測して要因分析し、効いていない転換点を発見する |
| スピード | 速い | 遅い(回して見つける) |
型のあるBtoB営業なら、以下の目安と自社の実績を比較すれば、ボトルネックがすぐ見つかります。
| 指標 | ベンチマーク目安 |
|---|---|
| 面談数(月・1人あたり) | 40〜50件 |
| コネクト率(架電→コネクト) | 20〜30% |
| アポ率(コネクト→アポ) | 15〜30% |
| 展開率(面談→展開) | 20〜30% |
| 展開獲得率(展開→受注) | 20〜30% |
| 受注率(面談→受注 トータル) | 5〜10% |
※支援現場での目安です。業界・商材・単価帯で変わりますが、「どの指標がベンチマークを割っているか」を見る最初のものさしになります。
一方、新しい打ち手はベンチマークがありません。その場合は仮の見立てを置き、KPIを広めに計測 → 要因分析 → 本当のボトルネックを発見します。そして大事なのは、最初の見立ては、たいてい外れているということです。
- 高級別荘サブスク:当初は「面談数(量)」を見立てたが、計測すると「体験に誘導できた人の受注率」が圧倒的に高かった。真のボトルネックは「体験誘導」で、Primary KPIは体験誘導数だった → 標準化して受注率1.5倍
- BtoB営業(面談):「受注率が低いのでは」と思ったが、計測すると受注率は標準範囲。実は社外日に1〜2件しか面談しない日が多く、面談の絶対量が真因だった → 社内日/社外日を分け、社外日は5件以上で外出可のKDIで面談1.3倍
そのまま使える「KPI設定シート」記入例
3層を1枚に並べると、設定が一気に行動まで落ちます。表の見方は「階層(KGI/ボトルネックKPI/Primary KPI/KDI)→指標・行動→目標値→現状値」。
営業部門の記入例
| 階層 | 指標・行動 | 目標値 | 現状値 |
|---|---|---|---|
| KGI | 年間売上 | 1.2億円 | 9,000万円 |
| ボトルネックKPI | 展開率(面談→展開) | 30% | 20% |
| Primary KPI | ショールーム来店件数 | 40件/月 | 25件 |
| KDI | 商談後に既存顧客へ来店依頼 | 全商談 | 60% |
マーケティング部門の記入例
| 階層 | 指標・行動 | 目標値 | 現状値 |
|---|---|---|---|
| KGI | 受注貢献額 | 4,000万円 | 2,800万円 |
| ボトルネックKPI | MQL→面談転換率 | 15% | 11% |
| Primary KPI | 資料DLから3分以内の架電率 | 80% | 40% |
| KDI | 毎朝ホットリード即応当番を1名アサイン | 全営業日 | ― |
カスタマーサクセス部門の記入例
| 階層 | 指標・行動 | 目標値 | 現状値 |
|---|---|---|---|
| KGI | NRR | 115% | 104% |
| ボトルネックKPI | オンボーディング完了率 | 90% | 72% |
| Primary KPI | 初期設定・データ移行 完了率(キックオフ後5営業日以内) | 100% | 65% |
| KDI | キックオフで①データ移行②引き継ぎデータ取得③初期設定を完了 | 全件 | ― |
部門ごとの深掘りは、インサイドセールスKPI/フィールドセールスKPI/マーケティングKPI/カスタマーサクセスKPIをご覧ください。
