ガイド#キーエンス流#フィールドセールス2026-10-17

休眠顧客の掘り起こし|BtoB営業は、同じ担当者に連絡しても動かない。Nは半分消える。だから「人を変える」

岩田 圭弘岩田 圭弘Exgrowth株式会社 代表取締役

この記事は、営業の流れのうち「商談|案件にする」の話です。全体像は 営業KPI大全 へ。

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期初にパイプラインを開く。前の期に出したNが、一覧にずらりと並んでいる。ところが、最終コンタクトの日付を見ると、半年前のまま止まっているものが多い。担当者に聞くと、「そろそろ連絡しようと思っていた」と言う。

私がキーエンスで見てきた感覚では、前の期に出たNは、期をまたぐと半分くらい消える。誰かが断ったわけではない。連絡が取れなくなり、前に進まなくなり、いつのまにか動いていない案件になる。

この記事では、BtoB営業の休眠案件を、どう防ぎ、どう動かすかを書く。購入が止まった顧客にメールやDMを送る話ではない。営業が作った案件が、止まる話だ。


結論:休眠は、連絡の量ではなく「人」と「管理」で動く

先に答えを書く。

  • 半分は消える:前の期に出たNは、期をまたぐと半分くらいが消える
  • 理由は温度が下がること:競合に負けるより、期間が長くて相手の温度感が下がるケースが多い
  • 動かすなら人を変える:同じ担当者に繰り返しても売れない。決裁者に当たりにいく
図:休眠案件について、先に結論を3つ
図:休眠案件について、先に結論を3つ

掘り起こしの前に、消える数を数え、消える前に管理する。この順番が大事だ。


休眠とは|この記事で扱う休眠

休眠顧客の掘り起こしというと、半年や1年取引がない顧客に、メールやDMを送る話が多い。BtoCやECでは、その方法が合う場面もある。

この記事で扱うのは、営業が作った案件が、動かなくなった状態だ。展開N(来期以降の検討として案件化したもの)、失注した案件、前に進まなくなった案件。顧客が離れたというより、案件が止まっている。展開F・展開Nの定義はフィールドセールスKPI設計に委ね、全体の判定は営業KPI大全にある。


Nは、期をまたぐと半分くらい消える

キーエンスで、10月から3月に出たNを例にする。そのNは、翌期(4月から9月)に持ち越される。持ち越されたNには、顧客社内の予算申請になるものと、申請にならずNのまま残るもの(残N)がある。そして、期をまたぐ間に、半分くらいは消える。

  • 消える
  • 顧客社内の予算申請になる(申請)
  • 申請にならず、Nのまま残る(残N)
図:前の期に出たNは、3つの道に分かれる
図:前の期に出たNは、3つの道に分かれる

私の計算の目安は、こうだった。

  • 期をまたぐと、半分くらいは消える
  • 翌期に持ち越された申請は、3割くらい取れる
  • Nのまま残った残Nは、10%くらい取れればいい

この3つで、次の期の見込みをおおまかに計算していた。数字はキーエンスで見た感覚値で、業種や商材が違えば変わる。他社の目安ではない。

大全では、N消滅数は測られないまま放置されやすい、と書いた。記録しなければ、物件は黙ってパイプラインから消える。「半分」という感覚は、その消える量の大きさを示している。


なぜ消えるのか|競合より、温度が下がる

消える理由で多いのは、担当者にコンタクトが取れなくなる、または案件が前進しなくなることだ。連絡がつながらない、競合に負けている、というのもある。ただ、どちらかというと、Nは期間が長いので、相手の温度感が下がってしまうケースが多い。

今すぐ必要ではないから、Nになった。時間が空けば、相手の優先順位は下がる。担当者が異動することもある。何も起きていないのに、案件は冷めていく。


消える前に防ぐ|月の仕組みにする

「忘れられていた」を防ぐために、私が実際にやっていたのは、次の3つだ。号令で「ちゃんと連絡しよう」と言っても、防げない。見る仕組みにする。

1. 次の期のパイプライン予測を、ちゃんと見る。

次の期にどれだけ物件が残るのかを、前もって確かめる。

2. 月が変わるタイミングで、FもNも物件管理を徹底する。

今期の案件(F)だけでなく、来期以降の案件(N)も、同じ頻度で見る。

3. 古い物件は、一旦パイプラインから外す。

最終コンタクト日からかなり日数が経っているもの、発生から何ヶ月以上も経っているものは、一旦外してしまう。これが結構大事だ。案件数が多いと、営業のフォローが回らなくなる。そこが問題になるケースが多いからだ。外した物件は、失注として扱う。日数や月数の基準は、自社の消えたNを数えて決める。

図:消える前に防ぐ、3つの管理
図:消える前に防ぐ、3つの管理

Nをクローズするのは、基本は失注のとき

Nのステータスをクローズに変えるのは、基本的に失注のケースがほとんどだ。受注するか失注するか、どちらかだからである。

閉じるときの流れは、こうしている。

  1. 失注として閉じる
  2. 責任者が「件数が溜まりすぎていないか」を確認する
  3. そのうえで、担当者がNG理由などを入力する
図:Nをクローズするのは、基本は失注のとき
図:Nをクローズするのは、基本は失注のとき

理由を残しておくと、あとで掘り起こすときの材料になる。失注理由の分類は失注分析とは、Nを閉じずに持ち越す考え方はSFAとはに書いた。


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掘り起こしは「人を変える」

休眠した案件を、もう一度動かすには、人を変えるに尽きる。

基本的に、その担当者では進められないケースが、かなり多い。だから、決裁者に当たりにいくアクションを起こすことが重要だ。

掘り起こしを始めて失敗した理由も、ここにある。同じ担当者に繰り返しアプローチしても、売れない。 「ちゃんとコンタクトしよう」という号令だけでは、うまくいかない。連絡の回数を増やしても、結果は変わらない。

図:休眠を動かすのは、連絡の回数ではなく「人」
図:休眠を動かすのは、連絡の回数ではなく「人」

決裁者に会うタイミングの考え方は決裁者に会うタイミングが、受注率を左右する、複数の関係者に入る考え方はマルチスレッディングと受注率にある。


掘り起こしとNの管理は、別の仕事

言葉が混ざりやすいので、分けておく。

Nの管理掘り起こし
対象今ある、生きた案件過去に失注した案件
やること前進させる止まったものを動かす
主な行動次の期の予測を見る、月替わりに物件管理、古い物件を外す決裁者に当たる、人を変える
図:「掘り起こし」と「Nの管理」は、別の仕事
図:「掘り起こし」と「Nの管理」は、別の仕事

先にNの管理で、消える数を減らす。そのうえで、掘り起こしは人を変えて動かす。この順番を逆にすると、動かない担当者に連絡を重ねることになる。パイプラインから外した物件は失注として扱うので、掘り起こしの対象は、ここから始まる。


自社で始めるなら|5つの順番

  1. 前の期のNの行方を数える。 消えた、申請に乗った、Nのまま残った、の3つに分ける
  2. 外す基準を決める。 最終コンタクト日からの日数、発生からの月数を、自社の消えたNを見て決める。外した物件は失注として扱う
  3. 月が変わるときに、物件を見直す。 FもNも対象にする。次の期の予測も見る
  4. 閉じるときは、理由を残す。 責任者が件数を確認し、担当者がNG理由を入力する
  5. 動かないなら、人を変える。 決裁者に当たりにいく。同じ担当者には繰り返さない
図:自社で始める、5つの順番
図:自社で始める、5つの順番

評価に入れるか、モニタリングにとどめるか

N消滅数や展開N件数は、本人が直接は動かせない数字なので、評価には入れない。モニタリングして、現場にも開示する。「配らない」と「見せない」は別である。仕分けの全体は営業KPI大全にある。

月替わりの物件管理や、閉じるときの理由の入力は、本人の意思でこなせる行動だ。立ち上げ期は評価に入れて定着させるのが有効で、定着したあとは、量だけでなく、その行動から物件が前進したかの2軸に切り替える。歩合のような金銭報酬には直結させない。考え方はKPIを人事評価に使うと数字が歪むにある。


FAQ

Q. 何ヶ月動いていない案件を休眠と考えればよいか。

A. 一律の正解はない。最終コンタクト日からの日数と、発生からの月数で、自社の消えたNを見て決める。基準を決めたら、パイプラインから外して、失注として扱う。

Q. メールやDMでの掘り起こしは意味がないのか。

A. 購入が止まった顧客を再び動かす場面では、有効なこともある。ただ、BtoBの案件では、担当者だけでは進められない場合が多い。同じ担当者に繰り返しても売れないので、決裁者に当たる動きを先に考える。

Q. 申請30%、残N10%は、自社にも当てはまるか。

A. キーエンスで見た感覚値で、業種や商材で変わる。自社の数字は、前の期のNの行方を数えて確かめる。


まとめ

  • 前の期に出たNは、期をまたぐと半分くらい消える。理由は、期間が長くて相手の温度感が下がるからだ
  • 消える前に防ぐには、次の期の予測を見る、月替わりにFもNも物件管理をする、古い物件を一旦外す
  • 閉じるのは基本は失注のとき。責任者が件数を確認し、担当者が理由を入力する
  • 休眠を動かすのは、人を変えること。同じ担当者に繰り返しても売れない
  • 掘り起こしは過去に失注した案件、Nの管理は今ある生きた案件。先に管理で消える数を減らす

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